馬と絵と
馬はとても不思議な生き物です。
臆病な生き物なのに、勇敢に障害を飛び越え、繊細な身体でダイナミックに動く。
相反するものを有するからこそ美しいのだと思います。
しかし彼らの最大の魅力は、その豊かな感情。
1つ1つの行動に気持ちがあり、私たちが応えてあげると、馬は喜んだり、理解したり、怒ったり。
どんどん人に歩み寄ってきてくれます。
そうして、馬が私たちにしてほしいこと、私たちが馬にしてほしいこと、お互いがお互いを理解しあった先に「あ、通じた!」と思う瞬間は、なんとも言葉にできない嬉しさなのです。
私が馬を描くのは、彼らへの「好き」が溢れたカタチ。
出産子育てのためここ数年は馬術競技から離れていますが、十数年本気で競技に取り組み馬と向き合ってきました。
国体や全日本で勝ちたくて、誰よりも早く厩舎へ行き1頭でも多く馬の世話をする。
競技馬の常歩でも乗りたくて、先生のトレーニングは見逃さない。
自分なりの努力を重ねてきました。
目標はまだ叶っていないけれど、そうした日々は今の私の糧になっています。
競技のなかで自分以上に欠かせないのは馬の存在。
トレーニングや餌の管理、厩舎での馬体管理。
ベストな状態にもっていくために、試行錯誤の日々です。
それは、なにも私だけではなくて、馬術競技や競馬。
観光乗馬や余生をすごす馬たちにいたるまで。
馬に関わるすべての人が当たり前に重ねている努力であると思います。
馬たちの毛艶や筋肉のつき方、バランス、身体の使い方。
その全ては、たくさんの人が磨き上げてきた1頭1頭の馬たちのドラマです。
その「想い」をくみ上げて、絵として残したい。
本気で馬と関わってきたからこそ、感じ取れることがあると思います。
繊細に描きこまれた絵に、馬のぬくもりと関わってきた人たちの想いを感じていただけましたら幸いです。